第1985回 眠りの素の秘めたる力



 初めてメラトニンを知った際、加齢と共に減少するという事からメラトニンを補給する事で若返りがはかれるとされていました。その後、時差ボケを解消してくれるサプリメントとして見掛けるようになり、現在では睡眠薬のようなものとして扱われています。

 メラトニンは脳の松果体で作られているホルモンで、昼や夜を感知する体内時計の調整に関わっており、体温や血圧、脈拍などを調整して眠りに誘う働きを持っています。暗くなると分泌されるという特徴があり、昼間はほとんど分泌されず夕方になって暗くなってくると徐々に分泌量が増えてきます。

 部屋を暗くして寝るのはメラトニンの分泌を円滑に行えるようにしているという事ができ、暗い事だけがメラトニンの分泌に必要という訳ではなく、朝日を浴びておく事も円滑な分泌には必要な要件となっています。

 太陽光を浴びてから15時間たたないとメラトニンは分泌されない事から、朝の7時に朝日を浴びておくと夜の10時に分泌がはじまり、夜中の2時にピークを迎えて深夜の熟睡を作り出しています。高齢者の眠りが浅いといわれるのは、加齢によって分泌量が減少したためともいわれ、メラトニンと眠りとの関係の深さを伺う事ができます。

 メラトニンの発見はアメリカ、イエール大学病院の皮膚科医アーロン・ラーナーによって、皮膚を白くするホルモンの研究中に牛の松果体から発見されています。それ以前に皮膚のメラミン細胞を刺激する事で皮膚を黒くするホルモンを発見していたラーナー博士は、逆に皮膚を白くするホルモンがあるのではと考え、それを探しているうちにメラトニンと出会っています。

 牛の松果体で作られているメラトニンは人の脳内でも作られていると考え、メラトニンの抽出を研究し、志願者を募って抽出に成功したメラトニンを注射してみたところ、ほとんどの被験者が眠ってしまい、メラトニンが睡眠やリラックスを誘発する事に関係している事が確認できています。

 最初の臨床試験で眠りに関係している事が明らかとなったメラトニンが、何故若返りのホルモンとして市場に出てきたのかは謎ですが、朝日を浴びてから15時間後の眠気を作り出すというメカニズムが、大きく場所を移動する事で強制的に体内時計が狂わされた事からくる時差ボケの解消に使われるという事は納得できます。

 最近では眠りに関連した事以外の効能についてはほとんどいわれる事のないメラトニンですが、免疫系にも働きかけていて、特に免疫を活性化して発ガンを防いでいるなど、体の全体に大きな役割を果たしている可能性が示唆されています。

 眠りを誘い、寝ている間に体をメンテナンスする重要な働きを持っているかもしれないメラトニンですが、メラトニンの研究には大きな障害が存在しています。メラトニンはホルモンであり、人の体内にもともと存在している物である事から、全く新たな用途を発見しない限り特許を取得する事ができなくなっています。そのため製薬会社ではメラトニンの研究を進めても独占的な利益に繋がらない事から、研究に対し消極的であったり、研究者への支援を行わないなど、重要な物質であるにも関わらず研究が進まない状態が続いています。

 本来が体内物質のホルモンである事から、体に優しい睡眠薬といった扱いのメラトニンですが、本来の働きが解明されれば眠りだけでなく発ガンの予防や若返り、さまざまな疾患の予防や治療など多くの効能がいわれる重要な物質という評価となる事が考えられます。採算性ではなく、社会貢献としての研究を待ちたいと思います。


 
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まとめtyaiました【第1985回 眠りの素の秘めたる力】

 初めてメラトニンを知った際、加齢と共に減少するという事からメラトニンを補給する事で若返りがはかれるとされていました。その後、時差ボケを解消してくれるサプリメントとして...

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