第1986回 桜力?梅力



 よく「○○ができたらノーベル賞もの」という言い方をして、人類の歴史に残るような偉業を評価する指標としてノーベル賞を引き合いに使ったりします。ノーベル賞はその名の通りアルフレッド・ノーベルの遺言によって1901年に始まった世界的な賞で、物理学、化学、生理学医学、文学、平和、経済学の6つの分野で顕著な功績を残した人物に贈られるものとなっています。

 アルフレッド自体はダイナマイトを発明して巨万の富を得た事から「ダイナマイト王」と呼ばれ、その巨大な資産の使い方について「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資して継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする」という遺言を残した事が後のノーベル賞となっており、アルフレッド本人は直接賞の設立には関わっていません。

 アルフレッドが生まれた際、発明家であり建築家でもあった父親のイマヌエルは事業に失敗して破産した直後で、家族と分かれてロシアへ渡り、ロシア軍相手に機雷の製造や設置を行う事業を設立して、ちょうどロシアがクリミア戦争に突入した事もあって大成功を収めていて、比較的爆薬と馴染みのある家庭環境だったという事ができます。

 父親の成功を受けて17歳の頃には2年間に渡って欧米7カ国を旅行し、科学に関する広い知識を得ています。22歳ではじめてニトログリセリンの存在を知ると、爆発のコントロールが難しいというニトログリセリンの最大の欠点を補う起爆装置の研究に着手し、30歳で起爆装置の特許を取得しています。

 偉人伝などで見掛けるアルフレッドの人生の転機となる弟、エミールや助手たちの死亡事故が起こるのはその翌年で、事故によってニトログリセリンの研究開発が禁止された事から地元のストックホルムを離れ、ハンブルグに新たな工場を建設して32歳でニトログリセリンの製造業を開始しました。

 ダイナマイトの発明は漏れたニトログリセリンが、緩衝材として箱の中に入れられていた珪藻土に染み込んでいるの偶然に発見し、珪藻土を使う事でニトログリセリンの爆発力を損なう事なく安全性を確保した事が元になっているとされ、どことなく遇線の産物のように思えるのですが、ダイナマイトの重要な部分はニトログリセリンに的確に着火して燃焼させ、正確に爆発を起こさせる事にあるので、その要となる「雷管」を発明したという点でもアルフレッドの偉業という事ができます。

 そうして開発された珪藻土を使うダイナマイトですが、10年も経たないうちにニトログリセリンに低硝化綿薬を混合する事でゲル化させた「プラスチングゼラチン」が開発され、珪藻土に染み込ませた際と同じ安定性を持ちながら爆発力が増している事から、以後は珪藻土を使ったダイナマイトは作られなくなり、少なくともノーベル賞が始まってからは作られていないといわれています。

 そんなダイナマイトですが、作り方によってさまざまなバリエーションが存在しています。松、桜、桐、榎、梅、桂といわれると、どこかの料亭のメニューのような感じがしてしまいますが、すべてダイナマイトの名前となっています。

 プラスチングゼラチンそのもので作ったダイナマイトが「松ダイナマイト」と呼ばれ、硝酸カリウムを混ぜると桜、硫酸アンモニウムだと桐となり、産業用ダイナマイトの中心的な存在は桐とされます。桐に減熱消炎剤となる食塩などを加えた物が梅で、メタンガスや粉塵に引火しないように炭鉱内で使われるダイナマイトとなります。

 ダイナマイトという名称は、ギリシャ語の「力」を意味する言葉が由来しているとされます。そのダイナマイトが後の日本で植物の名前を冠したどこか雅な風情の名前で呼ばれている事を知ったら、ダイナマイト王、アルフレッドはどう思うのかとつい考えてしまいます。


 
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まとめtyaiました【第1986回 桜力?梅力】

 よく「○○ができたらノーベル賞もの」という言い方をして、人類の歴史に残るような偉業を評価する指標としてノーベル賞を引き合いに使ったりします。ノーベル賞はその名の通りア...

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