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第1996回 清める物


 よくファンタジー小説などで、その場を清めたりあまり強力ではない魔物を寄せ付けなくするために「聖水」が登場します。水は地球上ではありふれた物質であり、液体である事から汚れを洗い流す事に使われる事から、多くの宗教で穢れを祓う物として扱われています。

 水は汚れを洗い流す働きに合わせて、純粋な水は浸透圧が高い事から、細菌の細胞質に染み込んで膨張させ、細胞膜を破壊する事で殺菌を行ったり、活動に酸素を必要とする好気性細菌を空気から遮断して酸素を絶ち、活動できないようにするという働きもあり、かつて悪霊の仕業と考えられていた感染症から守ってくれると考える事ができ、穢を祓う物という事ができます。

 水と同じく清めに使われる物として、酒の存在を上げる事ができます。神への捧げ物として使われる事もある酒にはアルコールが含まれ、アルコールはタンパク質を凝固させる働きがある事から、細菌の細胞膜や細胞質のタンパク質を凝固させて死滅させ、殺菌効果を発揮してくれます。

 酒と同じく塩も神前に捧げられたり、塩そのものを穢を祓うために振り撒いたりする事があります。塩は純粋な水が浸透圧で細菌の内部に侵入するという事を逆にする働きを持ち、細菌の内部の水分を引き出す事で細菌が活動できなくしたり、死滅させたりする働きを持っています。

 こうして見ると清めに使われる物は、細菌の感染から身を守るための働きが備えられている事が判ってきます。殺菌力というと、ニンニクの強烈な辛味と臭味の元となっているアリシンにも強力な殺菌力がある事が知られています。

 しかし、ニンニクは禅寺などで「山門に入るを能わず」とされるなど、清めとは逆の印象を受けてしまいます。殺菌力が強力で抗生物質などのように使い続けても耐性が生じず、結核菌のように表面に保護層を持っていて、薬剤が届きにくい菌にも作用する事ができる事から、アリシンを含むニンニクは大きな清めの力を持っているように思えます。

 ニンニクを清めに使う話は、日本最古の書物である「古事記」に登場していて、倭建命(やまとたけるのみこと)が東国を平定して帰途に着いた際、悪霊が白い鹿に化けて現れ、それをニンニクを投げ付けて退治したと記されています。同様の話は「日本書紀」にも登場していて、ニンニクが持つ強力な悪霊を退治する清めの力を伺う事ができます。

 人とニンニクの出会いを伝える伝説でも、悪霊に取り憑かれた夫を救おうとした妻が村の賢者に相談し、長旅の末に賢者が持ち帰った悪霊を祓う植物としてニンニクが登場しています。はじまりの時から穢を祓う物であり、日本最古の文献にも清めとして使われた事が記されているニンニクですが、その後、山門に入れないほどの禁忌とされてしまう事には、やはりその臭いにあるのではと思ってしまいます。しかし、臭いあってこそのニンニクの効能なので、臭を巧く抑え込みながらの利用こそが最良といえます。卵のタンパク質を利用して臭みを抑えて風味を引き出し、効能は確保する、にんにく卵黄には人の優れた知恵を見る事ができるように思えます。


 
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