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第2022回 乾燥と生



 以前、イタリア人のシェフが「パスタは乾燥させる事で風味が良くなる。パスタは絶対に乾麺を使いなさい」と断言していたので、以来、乾燥パスタを使う事にしています。最近、スーパーの生麺を扱うチルドのコーナーに生麺のパスタが売られていたり、生パスタを売りにしたレストランなどを見掛け、実際はどうなのだろうと気になってしまいます。

 食材は干物などのように乾燥させる事で単純に水分量が減少するだけでなく、味や風味が濃厚になるという事もあります。そのためイタリア人シェフの発言も高い信憑性を感じてしまうのですが、生パスタの製造業者の発言、「パスタは乾燥の過程で風味が失われてしまうので、生パスタはそれがない分、風味が豊かです」という事もどこか納得してしまうものがあります。

 パスタの原料は「デュラムセモリナ」と呼ばれる特殊な小麦粉が使われています。デュラムという品種の小麦を粗挽きのセモリナ挽きにした粉の事ですが、デュラム小麦の特殊性は遺伝子の段階からとされています。

 小麦の遺伝子は7本の染色体で一つのゲノムを構成しているのですが、それが2つや4つ、6つで一塊となる事から、2倍体や4倍体、6倍体といった系統に分ける事ができます。その中で6倍体のものが「普通系」と呼ばれる小麦となっているのですが、デュラム小麦は4倍体となっていて、ポーランド小麦やイギリスのリベット小麦などと同じゲノム構成となっています。

 乾燥した土地での栽培に適していて、粒が大きく、半透明のガラス質と呼ばれる硬い胚乳を持つ事が特徴となっています。名前のデュラムはラテン語の「硬い」という言葉、「デュール」に由来していて、通常の小麦粉の製粉工程とは異なる丁寧な粉砕やふるい、純化といった製粉工程を経て製品化されています。

 セモリナ挽きはデュラム小麦のタンパク質の組織を破壊しないように工夫された製粉方法で、純化工程の際にふすま片を取り除く事にも適していて、ふすまの混入を嫌うパスタに最適な小麦粉がデュラムセモリナとされています。

 デュラム小麦のタンパク質組織を守るようにセモリナ挽きされたデュラムセモリナは、タンパク質を非常に多く含んでいて、強い結合力と適度な伸展性、胚乳に含まれるカロチノイド系の黄色色素であるキサントフィルによる琥珀色を備えた生地となります。茹でる事で熱が加わると生地の中に均一に広がったグルテンが網目状になって熱変性を起こし、歯応えのあるパスタ特有の食感が得られます。

 その熱変性を起こさせるための茹でるという調理の前に、乾燥させるという工程の有無が乾燥パスタと生パスタの違いのように思えるのですが、細かく見てみると生パスタが手打ちで生地を捏ね、パスタマシンで伸ばされ、成形されることに対し、乾燥パスタは機械によって圧力が掛けられた後、金型から押し出して成形されています。この圧力の存在も麺としての仕上がりに影響を及ぼすように思われ、結局、生パスタと乾燥パスタを単純に比較する事は難しいように思えます。

 同一の素材、同一の製法、調理法も同一にしてはじめて本当の違いが判るのかもしれませんが、本場のイタリアでは乾燥パスタの利用が圧倒的に多く、レシピも乾燥パスタを前提に組まれている事を思うと、このまま乾燥パスタで良いようにも思えてしまいます。


 
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