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第2058回 悪魔の芋菓子(1)



 加工食品の裏面のラベルを見ていると、使われている原材料がいろいろと記載されていて興味深く思えてきます。品質を改良するために添加物としてデンプンが使用されている事があり、由来する原料名を使って「○○デンプン」と記載される事が多いのですが、その○○の部分に「タピオカ」と書かれているとなかなか良い物が使われていると思ってしまいます。

 デンプンは由来する原材料によって若干性質が異なり、工業的に見るとタピオカ由来のデンプンが最も優れていて、原材料としての単価も高値となっていると聞かされた事があります。特に最近の冷凍麺の品質の向上はタピオカデンプンによるものが大きいともいいます。

 タピオカデンプンはキャッサバと呼ばれるイモから採られていて、キャッサバは原産地の中央ブラジルだけでなく世界中の熱帯で広く栽培されています。そんなキャッサバが大変な事件を引き起こしていたのですが、日本では小さな記事としてしか扱いがなく、30人もの死者を出した食中毒事件でも他国の事となると関心が低くなってしまうものだと思えていました。

 事件の起こりはフィリピン中部のボホール州マビニの小学校に地元のおばさんがキャッサバを油で揚げたお菓子を売りに行き、昼休みにそれを食べた児童の中から吐き気や腹痛といった食中毒の症状が見られ、病院に搬送されるまでに14人が死亡し、13人が到着後の病院で死亡、さらにその後、2人の死亡が確認されています。

 キャッサバを揚げたお菓子は地元では「マルヤ」と呼ばれ、本来のマルヤはバナナを油で揚げた物との事ですが、キャッサバを揚げた物も普通に食べられていて人気となっていたといいます。キャッサバには甘味種と苦味種があり、苦味種はデンプンを採るために使われますが、甘味種は味や食感がサツマイモに似ている事からあく抜きをするなどして調理用に使われる事もあります。

 被害に遭った中には一口食べて味がおかしい事に気付き、もう一口食べてみて苦味が強いので食べるのを止めたという児童もいたのですが、その児童も10分後には食中毒の症状に陥っており、今回の原因となった物質の毒性の強さを伺う事ができます。

 キャッサバには外皮を中心にシアン化合物(青酸配糖体)系のリナマリンとロトストラリンといった毒素が含まれていて、不用意に食べると食中毒に陥る事があるので、今回の事件もそれが原因ではないかと考えられていました。

 甘味種のキャッサバでは毒素は外皮に集中している事から、外皮を厚めに取り除くとある程度毒性を下げられる事が考えられるのですが、苦味種は塊根の中の方まで毒素が分布しているとされ、被害に遭った児童達の「いつもは黄色いキャッサバが今回のは白かった」という証言が甘味種と苦味種を間違えて使った事が原因と示唆しているようにも考えられます。

 キャッサバのお菓子を持ち込んだおばさんは、いつものように作って持ってきただけ、何もおかしな事はないとして自らお菓子を食べてみせ、そのまま食中毒を引き起こして入院してしまった事からもキャッサバのお菓子が食中毒の原因である事だけは確実という事ができます。

 キャッサバは加熱する事でも無毒化する事ができるとされるので、毒素が多く含まれた苦味種が誤って使われ、調理の加熱が不充分であった事などが重なって痛ましい事件が起こってしまったようにも思えます。しかし、その後、事件は意外な方向へと向かう事になります。


 
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