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第2077回 白い謎(1)



 日中の気温が下がってくると、夕食の献立を考える際に温かな煮込み料理を思い浮かべる頻度が高まってきます。さまざまな煮込み料理がある中でいろんな具材を使う事ができ、栄養のバランスも取りやすい事からシチューを作る事がよくあります。

 本来、シチューは大きめの一口大に切った具材を出汁やソースで煮込んだ煮込み料理全般を指すとされ、スープとの違いは切り分けられた具材の大きさ、煮込み時間の長さや全体の濃厚さ、前菜となるかメインディッシュとなるかという扱いの差とされますが、日本でシチューというと多くの場合、白いクリームシチューの事を指し、それ以外のシチューはビーフシチューなどのように違いが明確化されているように思えます。

 西洋料理であるシチューが日本へ伝えられた時期については定かではないとされますが、明治4年(1871年)、東京の洋食店「南海亭」のメニューに「シチウ(牛・鶏うまに)」という記載があったとされる頃から、維新の頃には入ってきていた事が考えられ、明治37年(1904年)には日本帝国海軍の昼食や夕食のメニューに「煮込み」としてシチューが採り入れられていた事からも急速に広まった事と思われます。

 しかし、日本におけるシチューの歴史として語られる西洋風の煮込み料理は、ほとんどの場合において赤ワインやトマトを使い、小麦粉の色が変わるまでバターで炒めたブラウンソースやドミグラスソースを使ったビーフシチューがほとんどとなっていて、黎明期においては白いクリームシチューの存在を示すものには出会う事ができません。

 日本のクリームシチューに良く似た物としてアイリッシュシチューの存在がいわれる事があります。アイリッシュシチューはその名の通りアイルランドの伝統料理で、角切りにした羊肉と輪切りにしたタマネギ、ジャガイモを交互に重ね、タイムやパセリなどの香辛料を加えてスープストックで丹念に煮込んで仕上げられます。家庭によってレシピが違い、最後に牛乳を入れて白く仕上げる家庭も多く、クリームシチューとの類似点を多く見出す事ができます。

 アイリッシュシチューがクリームシチューの原点となり、日本に伝えられて独自のアレンジが行われたと考える事も出来そうに思えるのですが、スープストックで具材を煮込んで仕上げに風味付けの牛乳を加えるアイリッシュシチューと小麦粉をバターで炒め、牛乳で伸ばして作るホワイトソースで具材を煮込むクリームシチューでは「似て非なる物」とも思えてきます。

 そうなると日本の食文化に突然登場し、それまでに普及していたビーフシチューを追い越してシチューの代表の座を得ているクリームシチューとは、どこか謎めいた存在のようにも思えてきます。


 
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