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第2096回 トマトの理由



 大好きな食材の一つにトマトがあり、南阿蘇ではたくさん栽培されている事やほぼ毎日食べている事から、私の血の赤い色はトマトのリコピンですと発言して笑われてしまう事もあります。最近ではさまざまな品種のトマトを見掛ける事もあり、色合いや形の面白い物を買ってみて楽しんでいるのですが、どうしても昔のトマトのようなものが感じられないと思えてしまいます。

 子供の頃、友人の家に遊びに行き、何軒かの家を回って数名の友人と合流しながら近くの公園へ遊びに行った事があります。その際、最後に訪ねた公園のすぐ近くの家に住む友人がおやつ代わりにトマトを一個、手に持ったまま出てきて、一口齧った際にトマト特有の青臭さを感じたという鮮烈な記憶があるのですが、今はそういった事が皆無と思えます。

 熊本には「塩トマト」と呼ばれる土壌の塩分濃度が高い干拓地などの過酷な土地で栽培し、糖度が8以上という味の濃いトマトがあります。果物並みの甘味とトマトの濃厚な味わいは、今のところ一番美味しいトマトと思えるのですが、それでも昔のトマトのようなものを感じる事はできません。

 トマトは未熟な青いうちに収穫し、流通を経て店頭に並ぶ際に赤く色付くように出荷されているので、葉で作られた栄養を充分に取込んでいない事から味が薄くなるといわれます。しかし、今日のトマトの味が薄い事については、そうした流通上の理由以前のものがあるとされています。

 トマトは南アメリカ大陸が原産地で、新大陸の発見によってヨーロッパへ持ち帰られ、存在が世界的に知られる事となります。当初は猛毒を持つベラドンナに姿が似ていた事から毒があると考えられ、なかなか食用としての認識が広まらなかったため、トマトの食用としての歴史は200年ほどと浅いものになっています。

 その200年の間に食用としての品種改良が進められるのですが、1920年代の終わりに新たな品種として偶然、それまでの品種のようにへたの部分に緑色が集中せず、全体に色合いが均一なトマトが発見されています。

 未熟な状態で薄めの緑色をしたそのトマトは、全体的に色合いが均一である事から収穫時期が判断しやすいというだけでなく、熟してきても色合いが均一に赤くなってくるため、完熟した状態で店頭に並べられているように見える事から消費者の人気を集め、市場を席巻する事となっています。

 最近になってトマトの遺伝子について行われた研究によると、均一に色付く新品種のトマトには「SIGLK2」と呼ばれる葉緑体の分布や蓄積に関わる遺伝子の活性が失われている事が判り、SIGLK2は糖分やリコピンなどのカロチノイドの産生にも関わっている事から、新品種のトマトは遺伝的に味が薄いトマトとなっている事が考えられ、現在、主流として市場に流通するトマトに活性化したSIGLK2を導入すると糖分やカロチノイドが20%程度増加する事が判ってきています。

 遺伝的に味や風味が薄いトマトである上に、流通の都合から未熟な状態で出荷されるという二重の弊害がトマトを味気ないものにしているという事が伺えるのですが、遺伝的な操作を行ったSIGLK2活性化トマトは法律の規制によって食用として味見をする事が禁じられています。通常の品種改良によってSIGLK2の活性を取り戻す事も可能とされる事から、改良品種の登場を待ちたいと思えてきます。弁当に入れやすいように、種の部分が少なくなるような品種改良も行われているそうですが、間違った方向へは進んでほしくないとトマト好きとしては切に願ってしまいます。


 
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