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第2100回 好戦的進化



 人と人に比較的近い存在であるチンパンジーの手形を見ると、簡単に区別する事ができます。チンパンジーの手は人と比べて人差し指などの4本の指がとても長く、親指だけが短いという特徴があります。

 チンパンジーの手は、枝を掴んで木の上を移動する事に適した進化が行われ、人の手は短めの4本の指と長い親指のお陰でそれぞれの指の連動性が良く、器用に道具を使う事に適した進化の結果と思えてきます。完全な二足歩行を獲得し、現在に続くライフスタイルを採った事がそうした違いに繋がったというのが定説となっていますが、そうではない可能性が示唆されてきています。

 アメリカ、ユタ大学のキャリファー博士が新たに発表した論文によると、人の短い4本の指と長い親指は全体を包み込む事で作られる形状である拳を作りやすく、二足歩行によって自由になった手を使って、最も単純で原始的な武器である拳を有効に使うという好戦的な進化を遂げた結果が人とチンパンジーをはじめとする霊長類との手の形状の違いに繋がったとされています。

 拳と平手を使って正面や水平方向、上方などに攻撃を繰り出した場合、当然の事ながら攻撃対象に与える事のできる打撃力は同じになります。しかし、打撃を加える面積の違いからより面積を小さく設定できる拳は、面積当りの打撃力がより大きくなり、平手による打撃の1.7~3倍ほどの攻撃力を有する事となり、拳の方が大きなダメージを与える事となります。

 単純に打撃面積だけを小さく設定するのであれば指を折りたたんだ状態、親指を人差し指に添えない形で拳と同じ打撃面積にする事ができますが、その状態で人差し指がどれだけの力に耐えられるかを計測すると、親指を人差し指に添えるだけで4倍もの衝撃に耐えられる事が判り、拳の武器としての優秀性を伺う事ができます。

 総合的な結果として拳を作る事で約2倍の攻撃力が確保されている事となり、打撃力、衝撃の吸収力においても優れた武器であるという事ができます。道具を器用に使いこなすための進化であるなら、親指を長く進化させて他の指との連動性を確保するだけで充分であった事が考えられ、小さな手のひらは高い攻撃力の拳のためと考えられます。

 チンパンジーよりも攻撃性が高いゴリラの手がより人に近い事や、人は怒りを覚えると無意識に拳を握ってしまう事、高い攻撃力を持った個体の方がより子孫を残しやすい環境下で進化してきた事などが拳の攻撃的な進化を裏付けているとされます。

 その反面、人の手の形状が今に近い形になったのは直立歩行を始めた頃と一致するとされ、二足歩行に適した足の形状に進化する事に関わった遺伝子の機能の一環として手の形状の進化も行われた可能性も考えられます。

 人が好戦的な生物であるかどうかについては、日々のニュースを見ていると感じられる事ではありますが、器用に道具を使いこなし、生産性を上げる事を目指して進化が行われたと考えたいと思ってしまいます。


 
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