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第1739回 食べられる?

 かつては食用であったのに、今では食べ物として見向きもされなくなった物、その一つに彼岸花を上げる事ができます。畑の畦などに自生し、秋の訪れを知らせてくれる彼岸花は、花を観賞する事はあっても食用として収穫するという話はほとんど聞かない事と思います。

 彼岸花の食用にされる部分は鱗茎(りんけい)と呼ばれる球根のような部分で、この部分にデンプンが含まれる事から水にさらして食用にします。

 鱗茎というとすぐにニンニクの事が思い浮かび、直接鱗茎を食べられないのかと思ってしまうのですが、彼岸花の鱗茎にはリコリンと呼ばれるアルカロイド系の毒素が含まれる事から、そのまま食べる事はできません。

 リコリンは水溶性なので、彼岸花の鱗茎をすり潰して充分に水にさらし、沈殿したデンプンを食用とするのですが、明治から昭和の初期頃までは、彼岸花からデンプンを精製する専用の会社が存在していたとされ、彼岸花が食用作物として扱われていた事を伺う事ができます。

 彼岸花というと畑の畦や墓場の近くで咲いている姿が思い浮かぶのですが、実はそのような場所で咲いている事には重要な意味があります。

 かつて彼岸花から採れるデンプンは、急場のための貴重な食料でした。そのため畑の畦に植えて、飢饉への備えとしていました。

 畦に植えられていた事にはもう一つ意味があり、毒物であるリコリンをモグラやネズミが嫌う事から、彼岸花を植える事で畦に穴を開けられる事を防いでいます。

 畦は畑にとってダムのような存在で、作物を育てるための水をしっかりと保持するという役割を担っているのですが、モグラやネズミなどによって巣穴を開けられてしまうと、そこから崩れて充分に機能しなくなってしまいます。それを防いでくれるのが、飢饉対策として植えていた彼岸花となっていました。

 また、野生動物は人間のようにさらしてデンプンを得るという食べ方をしない事から、彼岸花は毒草以外の何ものでもない存在となっていました。そのため野生動物は彼岸花そのものを嫌う傾向があり、墓場にたくさん植えておくと野生動物が近付かなくなるというメリットがあります。

 昔は今のような火葬ではなく土葬であったため、死臭を嗅ぎつけた野生動物によって墓が荒らされてしまうという事がありました。彼岸花はそれを防いでくれ、その名の通り彼岸の時期に咲いて墓場を彩ってくれていました。

 それだけ重要な役割を担っていた彼岸花は、日本人との関わりの深さを示すかのように全国各地の地方名を合わせると1000種ほどにもなるとされます。しかし、墓場のイメージが強いせいか、シビトバナ、ユウレイバナ、ハカバナ、ヤクビョウバナ、ドクバナ、ジゴクバナなどよあまり好意的ではないものも多く、それが食べられなくなった理由の一つではと思ってしまうのですが、どちらかといえばトウモロコシやジャガイモなどから安価なデンプンが作られるようになった事が最大の理由となっています。


 
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