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第2129回 祝いの破裂音



 子供の頃、駄菓子屋へ行くと「ダイナマイト」と呼んでいた爆竹が売られていました。映画などで見るダイナマイトに良く似た小さな爆竹は、当初は側面に桜の花をかたどった印刷が施されていたのですが、途中から桜の花の印刷がないカラフルな色付けがされた物に変わり、大きさも少し小さくなって爆発力も小さくなり、不発で終わる物も多かった事から、安全上の配慮が行われたのかコストダウンが行われたのかと、いまだに謎のスケールダウンとなっています。

 中国の正月に当る春節には、爆竹は欠かせないものとなっているとされ、日本で売られている物よりもはるかに大きく、破裂音も爆発力も強力とされます。最近では安全意識の高まりから数は減ったとされますが、それでも数百本を束ねて帯状にした物の端を竿などに吊るして火を着け、連続的に激しい破裂音を響かせている姿は圧巻と思えると同時に、異なる文化圏の祝い事と思えてきます。

 中国で春節に爆竹が欠かせない物となった由来は魔除けにあるとされ、漢の時代に書かれた「神異経」や「西荒経」によると西方の山奥に人に似た姿で一本足の「山魈」と呼ばれる怪物が棲んでいて、山魈に出会った人は高熱を発して苦しみながら死んでいくとされていました。

 山魈は春節になると山を下りて人里までやってくる習性があった事から、人々にとって春節は1年の始まりとして目出たいよりも山魈に出会ってしまうかもしれない恐怖の日となっており、人々は春節をとても怖れていました。

 ある日、一人の農夫が山で竹を伐採してから家へ帰ろうとしていると、とても冷たい風が吹いていた事から寒くてたまらなくなり、とりあえず伐採した竹で焚き火をして暖を取る事にしました。

 火を起こして竹を燃やし、温まりながらふと目を上げるとそこに山魈がいた事から農夫は驚き、慌てて焚き火をそのままにして逃げ出しました。すると山魈は火の着いた竹が爆ぜる音に驚いて逃げて行き、山魈の意外な弱点を知った農夫はその事を皆に告げて山魈が山を下りてくる春節に爆竹を鳴らす事で、山魈が人里に近付かないようにして安心して春節を迎えるようになったといいます。

 今でも竹を燃やすと突然の破裂音に驚かされる事がありますが、南北朝時代頃までは竹を燃やした原始的な爆竹が一般的に使われており、その後、火薬の発明に伴って火薬を使用した爆竹が作られるようになりますが、爆竹の名前は伝統的に使われるようになっています。

 現代風の紙を巻いた爆竹が作られるのは宋代の事とされ、串状に束ねる事で連続して長時間燃焼し続けられるように工夫されたのも同じ頃とされ、その後、さらに発展を遂げながら徐々に山魈を祓うものから神を迎えるためのものと意味合いが変化し、今日を迎える事となっています。

 日本でも鎌倉時代には後嵯峨上皇が爆竹を見学したという記録が残されており、爆竹の習慣があった事が判ります。日本における爆竹は原始的な竹を燃やしたものであったとされ、その伝統は今日の正月の飾りなどを竹と一緒に燃やす「ドンド焼き」などに見る事ができます。

 日本の厳かな正月には爆竹の破裂音は似合わないとは思いますが、たまには派手な火薬も良いのではと思う反面、毎年、爆竹による死者が出ると聞かされると、穏やかな正月が良いと思えてきます。


 
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