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第2135回 合金の妙



 アマルガムというと水銀と何らかの金属を混ぜ合わせた合金の事を指しますが、あまり良い印象を持てないのは有害な水銀が使われている事やその利用法にあるように思えてきます。金属は混ぜ合わせて合金にすると、不思議と素材の良い面が際立つ事が多く、単純に複数の金属を合わせた以上の大きな効果を得る事ができます。アマルガムもそんな金属の性質を使用したもので、他の金属と合金になりやすい水銀特有の性質を利用したものという事ができます。

 日本で古くから使われていたアマルガムを利用した技法の一つに「消鍍金(けしめっき)」があり、すでに古墳時代には使われていたとされます。消鍍金は今日のような電解鍍金が想像もできなかった頃の金属の表面加工技術の一つという事ができ、合金になりやすく常温では液体という水銀の性質を大いに利用したものという事ができます。

 水銀と金は相性が良く、常温で液体の水銀に金を近付けるとまるで溶けるように金は水銀に吸い込まれていき、金アマルガムが形成されます。金アマルガムから鹿皮や反古紙などを使って余分な水銀を絞り出して硬さを調節し、梅酢などを使って洗浄した銅の表面に均一に金アマルガムを塗り付けて火にかざすと、およそ350度で水銀が蒸発してしまう事から金が銅の表面に残され、メッキされた状態ができあがります。

 奈良の大仏の表面を覆う金メッキにもこの方法が使われ、加熱されて気化した水銀の蒸気が大気中に放出された事から、水銀による健康被害が発生した事が考えられますが、実際、その事を示していると思われる奇病の発生が大仏建立の頃の文書に記載されています。

 金アマルガムの手法は金や銀などの鉱石を精錬する際にも用いられ、細かく挽いた鉱石を加熱しながら水で練って、そこへ水銀を加える事でアマルガムを形成し、金や銀を取込んだアマルガムを加熱する事で水銀を蒸発させれば金や銀を得る事ができます。

 通常は気化した水銀の蒸気は回収され、再利用する事で大気中への放出が起こらないようにした設備の中で処理されるのですが、そうした設備のないアマゾンの奥地で起こったゴールドラッシュの際、奈良の大仏建立と同じ奇病の発生が見られた事もアマルガムの印象を悪くしているようにも思えます。

 古墳に大仏、アマゾンの奥地。日常生活とはあまり関係のない話のように思えますが、アマルガムを一気に身近な物としてしまうのは歯科治療に使われるアマルガム修復かもしれません。アマルガム修復はアマルガムを虫歯の修復に使うもので、アマルガムの加工に適した性質や安価である事などから多くの国で採用された歯科治療法となっています。

 歯科治療に用いられるアマルガムには「銅アマルガム」と「銀スズアマルガム」があり、銅アマルガムはその名の通り銅と水銀を合わせた物にスズや銀を添加材として加えて質感を調節して使われています。銅には殺菌作用という利点はあるのですが、徐々に水銀と共に溶出する事から現在ではほとんど使われなくなっています。

 銀スズアマルガムは銀とスズを用いたアマルガムで、銀とスズの合金に銅や亜鉛を添加した粉末を水銀で練って作られています。歯に対しての接着性はないのですが、固まる際に僅かに膨張する事からしっかりと内部から患部に圧着するという性質や安価である事から広く使われています。

 銀スズアマルガムからも水銀の溶出が起こるとされ、健康への弊害が懸念された事があります。歯科医によって各金属の配合比率が違う事から、健康被害の発生を予測する事が難しく、問題をより複雑にしているともいわれます。

 そうした事情からあまり良い印象のないアマルガムですが、常温で液体、合金になりやすいという水銀の特徴を上手く利用した技術であり、長い金属との付き合いの中で培われてきた知恵の一つという事ができます。


 
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