FC2ブログ

第2255回 牛乳保護?



 子供の頃、お気に入りだった絵本に農夫と悪魔が契約し、悪魔が損をしてしまい、その報復を行うというものがありました。最初、畑にできる作物は均等に二分するという約束で、農夫は畑を提供する代わりに悪魔は農作業を行い、畑の上にできた物は全て悪魔の物とし、農夫は地下にできた全ての物という契約を交わします。

 ずる賢い農夫はカブを栽培して悪魔が葉しか手に入れられなかったのに対し、農夫は地下にできるカブ本体を手に入れ、悪魔は辛い農作業の割には価値のない物しか手に入れられなかった事になります。

 翌年、前年の事を非難する悪魔に対し、農夫はそれでは契約を前年とは逆にしようと提案して悪魔と同意し、今度は悪魔が地下にできた全ての物、農夫が地上にできる物という契約の下に麦を栽培します。

 契約が逆になった事で、昨年の農夫のように儲ける事ができると考えた悪魔は農作業に精を出し、収穫に時期には大豊作となっています。農夫は早々に麦を刈り取り、後に残された食べる事さえできない麦の根を眺めながら悪魔は怒りに身を震わせますが、どうしようもありません。

 見かねた別な悪魔が人に化けて農夫の下を訪れ、麦の加工法を伝授します。辛い農作業もせずに豊作を迎えた農夫は浮かれて近所の人たちを家に招き、悪魔が化けた人に教わった麦を使った飲み物を振舞います。

 しばらくすると人々は陽気に騒ぎだし、うるさいくらいに宴会は盛り上がります。しかし、ふとした事で口論が始まり、喧嘩に発展すると人々は激しく罵り合い、殴り合って散々な状態で宴会はお開きとなってしまいます。

 フラフラと歩きながら家を出た人々は農夫の家の前の溝にはまり、泥だらけになりながら口々にぶつぶつと文句を言い続けていました。その様子を見て「あれは何を調合したのだ?最初の賑やかさは鶏の血、次の争いは狼の血、最後の様子は豚の血を混ぜたのだろう?」と尋ねる悪魔にもう一人の悪魔は、「麦を発酵させて酒を造ったのだよ」と答えました。

 百薬の長とされながら体を蝕む物ともいわれ、健康、不健康という相反する両面を持つとされる酒に関する事に触れるたびにその話を思い出してしまいます。

 学生の頃、学食のテーブルに置かれた週替わりのメニューを記載した紙製の三角柱の一面に、「コンパが増える時期です。急性アルコール中毒にならないように、出掛ける際にサラダ油などを飲んで胃に膜を張っておきましょう」という一文が書かれていて、何というアドバイスだろうと思った事があります。

 サラダ油はかなり極端な意見だと思えるのですが、牛乳で膜を張ってアルコールの吸収を抑えるという話は広く聞かされます。実際に牛乳を飲んだ後に胃カメラで観察すると、胃の内側には粘膜の表面に牛乳のタンパク質による膜が形成されているとされます。

 酒に含まれるアルコールは胃や小腸から吸収される事から、事前に張った膜はアルコールの吸収を阻害し、悪酔いを防いでくれるという感じがするのですが、アルコールの分子は非常に小さく、牛乳の大きな乳タンパクの隙間を簡単にすり抜けてしまうために、牛乳による膜の形成と飲酒後の血中アルコール濃度の上昇は関係がない事が確認されています。

 アルコールの吸収を阻害はしてくれない牛乳ですが、酒を飲む前に飲んでおく事で含まれているタンパク質やさまざまな栄養素が肝機能を向上させてくれるらしく、アルコールの分解を早めてくれるとされます。

 肝機能の向上による血中アルコールの速やかな低下や、アルコールの分解後に発生し、頭痛の原因となるアセトアルデヒドの分解も良好に行われる事から吸収を阻害して二日酔いを防ぐと誤解された牛乳ですが、「飲む前に飲んでおく」価値は充分にあるのかもしれません。


 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR