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第2276回 失われしダマスカス


 継続は力なりといわれ、その一環ともいえる事で、古い時代から継承されて発展しながら、一旦、途絶えてしまった事で技術が失われてしまい、その後のさまざまな研究や現代の科学技術でも再現できないという事が世界中に散見されます。

 日本の代表的な文化の一つである日本刀もその一つという事ができ、平安時代の中期に現在に通じる形ができ上がってから慶長年間(1596~1615)までという古い時代に作られた「古刀」、その後の時代に造られた「新刀」、現代でも継続して作られている「現代刀」に分けられる中、古刀の優れた作刀技術には新刀、現代刀は及ばないとされています。

 日本刀と同じく鉄を鍛造して作られた非常に強靭な刀剣とされる「ダマスカス刀剣」も製造が途絶え、いまだに詳細な製造法が判らない謎の存在となっています。しかも古刀のように古い時代に製法の継承が途絶えたのではなく、18世紀という近代まで作られていながら製法が失われてしまい、再現できないままとなっています。

 ダマスカス刀剣は10世紀頃からシリアのダマスカスで作られはじめた事からその名で呼ばれていますが、工程の全てがダマスカスで行われていた訳ではなく、作刀上重要となる製鉄部分はインドからの輸入に頼っていました。インドからもたらされる特殊な鋼である「ウーツ鋼」を加工してダマスカス刀剣は作られ、このウーツ鋼の再現ができない事がダマスカス刀剣を再現できない理由となっています。

 ウーツ鋼の「ウーツ」とは産出や製鉄を行う地域の名前ではなく、サンスクリット語で「非常に固い物」の意味がありダイヤモンドを指す言葉とされ、ウーツ鋼が如何に堅牢な金属であったのかを伺う事ができます。

 ウーツ鋼によって作られるダマスカス刀剣は、折り返し鍛錬と呼ばれる技法で作られる日本刀に見られるような木目状の縞模様が見られ、黒味を帯びた表面に派手な木目模様が入るという一見してそれと判る外見を有しています。

 ウーツ鋼はその複雑な縞模様からるつぼを使って製鋼した鋼に炭素を含むカーバイトの層を形成させ、鍛造加工する事で作られていたと考えられ、その後の学術研究によってほぼ完全なウーツ鋼が再現されたと考えられていました。

 しかし、ドイツ、ドレスデン工科大学のバウフラー博士を中心とした研究チームによって、ウーツ鋼からカーボンナノチューブの構造が発見された事から、現代のウーツ鋼は完全に再現された物ではなかった事が判っています。

 現在でもダマスカス刀剣の再現は不可能なままとなっていますが、黒味を帯びた刀身に特徴的な縞模様を持つナイフなどが「ダマスカス鋼使用」として売られています。カスタムナイフ用の高級素材として地鉄が売られているのですが、明らかに似て非なる物という事ができます。

 伝説上のダマスカス刀剣はとてもしなやかで、折り曲げても折れたり曲がったりする事はなく、テーブルからはらりと落ちた絹のスカーフがダマスカス刀剣の刃に触れるとその重みだけで切れてしまうという鋭利さを持っていたとされます。誇張された話とは思いますが、失われた技術が再現される日を心待ちにしたいと思っています。


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