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第1757回 5大系統考(3)



 カレーの歴史と系統を考える上で欠かせない存在として、タイ王国があります。タイ人の先祖はもともと中国の雲南省の山岳地帯で農耕を行って生活していたのですが、漢民族などの北方民族の南下を受けて各地への移住をはじめ、9世紀頃までに現在のタイ王国があるインドシナ半島へ移住しています。

 そのため、タイ料理の原点には中華料理があるとされ、中国人によって日干しや油を使った調理方法、中華鍋や蒸篭が伝えられたとされます。四川料理との類似点が多いともいわれ、辛味が強い料理が多い理由の一つと考える事もできます。

 タイ人は外国からもたらされる食文化を、在来のタイ料理と融合させる事が得意で、さまざまな国の食文化を取り入れながら独自の料理として発展させてきています。

 タイ料理に欠かせない素材であり、今日のカレーにも不可欠な素材である唐辛子が持ち込まれたのは17世紀の事で、ポルトガル人の手によって持ち込まれ、瞬く間にタイの食文化に浸透しています。

 同じ17世紀、インドの仏教僧によってカレーが伝えられていますが、タイでは入手が困難な素材もあった事から、インドと同じレシピは使われず、乳製品はココナツミルクで代用され、多くのスパイスがレモングラスやバイマックルートなどのハーブに置き換えられました。

 タイのカレーはインドのカレーと違って、多種多様なスパイスを組み合わせて独自の風味を作るのではなく、新鮮な生のハーブを多く使って風味を出し、唐辛子をふんだんに使って非常に辛い味にしています。

 通常、タイのカレーには乾燥させた物ではなく、生の唐辛子が使われ、インドのカレーで多く使われるターメリックを使用しない事から、黄色い色合いではなく、赤唐辛子を使った場合は赤いカレーになり、緑唐辛子を使った場合は緑色のカレーに仕上がる傾向があり、香りとこくを出すためにナンプラーが使われる事も特徴の一つとなっていて、完全に南北のインドとは異なる存在となっています。

 カレーの5大系統の最後は、インドをはじめとするアジアの国々を植民地化していたヨーロッパで、インドのカレーがヨーロッパの伝統的な煮込み料理であったシチューなどと結び付き、独自のヨーロッパカレーが生まれています。

 インドでのカレー作りは、素材に合わせてスパイスを調合し、その都度、スパイスを挽いていましたが、合理的なヨーロッパ人は、毎回スパイスを挽かなくても済むように、あらかじめ粉末化したスパイスを調合しておくという、カレー粉を考案しています。

 インドでは素材ごとに別々のカレーを作る事が一般的であった事に対し、ヨーロッパでは肉や野菜といった素材が全て一緒に煮込まれ、ご飯の上に最初から直接かけて盛り付けられるようになっています。

 カレー粉を使って味付けする事が一般的となり、スパイスの風味と辛味は控えめで、伝統的にシチューやスープに使われてきたフォンやブイヨン、スープストックなどが取り入れられ、肉や野菜、ハーブなどを長い時間をかけて煮込む事で、深みのある味を出す事が大切とされ、南北インド、タイとも一線を画す物となっています。

 日本のカレーはヨーロッパのカレーを元にしていますが、小麦粉を使ってとろみを付ける事が大きな違いとなっていて、一般家庭で作る際は、多くの場合、固形のカレールーを使うを使う事、家庭によっては鰹節などの日本独自の物が使われ、味噌やしょうゆ、ウスターソース、ヨーグルトやチョコレートなどの多彩な隠し味が存在する事も特徴となっています。

 カレーにとって重要なスパイスである唐辛子は南米の原産で、新大陸の発見がなければインダス文明に端を発したカレーが唐辛子と出会う事はありませんでした。

 インドで生まれ、新大陸から持ち帰られてヨーロッパを経由して持ち込まれた唐辛子を取り込み、タイで激辛となり、ヨーロッパへ伝えられて煮込み料理となり、日本へと渡って国民食となったカレー。インダス文明から始まるカレーの長い旅は、ヨーロッパを経由しているだけに最も遠い土地は日本であるように思えます。その日本で最近、キーマカレーが人気となっていました。キーマとは肉の事で、キーマカレーとは「肉のカレー」の事を指しています。素材ごとにカレーが作られるというインドのカレーに戻ったようで、長い旅の途中、ひと時の里帰りをしているようにも思えます。


 
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