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第2299回 菊という伝統



 子供の頃、たまたま見ていたプロレス中継で、入場してリングに上がった悪役のレスラーが受け取った花束を食いちぎり、奇声を上げるというパフォーマンスをしていたのですが、花束には日本を表現するためか菊の花が多く使われていたため、叫んでいる口の中が黄色く染まり、菊には独特な芳香がある事から、悪役とはいえ大変だなと思ってしまった事があります。

 最近では食べる事を目的としたエディブルフラワーもさまざまな種類が売られていて、花も食べられる部位であるという事が広く定着してきている事とは思いますが、当時は花は食べ物とは思えなかった事もあり、花にかじり付く姿は大きな違和感となっていました。

 そんな事もあり、食べられるようになったのは最近の事のように思えてしまう菊の花なのですが、実は伝統野菜として古くから親しまれてきた食材となっています。

 菊は日本でも古くから親しまれ、「日本書紀」にも菊の記載が見られるほどの歴史を持っています。当初は野菊として自生していたものを観賞用として栽培したりしていた事が考えられますが、中国で延命長寿の秘薬とされ、菊茶や菊花酒、漢方薬として愛用されていた影響を受け、苦味が少ない花びらの部分を利用するかたちで奈良時代から栽培、品種改良が行われるようになっています。

 今日、食用菊の主流となっている品種、「もってのほか」はこの頃に中国から伝来したとされ、平安時代の中期に行われた延喜式には「黄菊花」として名前が記されています。

 それほど古い歴史を持つ食用菊ですが、庶民の間に広まるのは江戸時代に入ってからの事で、元禄10年(1697年)に記された「本朝食鑑」に「甘菊」の記載がみられ、松尾芭蕉の大好物であったとも伝えられています。

 茹でた菊の花びらを四角く広げて乾燥させた物は「菊海苔」と呼ばれ、築地市場の野菜類を扱う売り場で「海苔」というと菊海苔の事を指すほど定着した食材となっています。

 エディブルフラワーが定着して花も食材として受け入れられるようになり、見た目が綺麗なだけでなく意外と栄養価が高い事も知られるようになってきていますが、残念な事に伝統食材としての食用菊の生産量は減ってきているとされ、最盛期の半分以下とさえいわれています。

 どうしても悪役レスラーのイメージが強い上に、丹精込めて育てられた菊の花びらだけを摘んで使うというのはとても贅沢な気がしてしまうのですが、伝統食材の保護のためにもお吸い物の表面を一面に彩る華やかないただき方をしてみなければと思っています。


 
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