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第2329回 旨味の出処



 いろんな加工食品の原材料表記の中に見られていて、どことなく化学薬品のようなものを感じながらそうではない物、その一つが「酵母エキス」ではないかと思えます。酵母エキスは旨味とコクを加えてくれる調味料として、広くさまざまな加工食品に使われています。

 エキスという事でコトコトと長時間に渡って煮出したり、アルコールに漬け込んで作ったような感じがしますが、酵母を鍋で煮た訳でもなく、酵母が持つ力そのものを利用して酵母エキスは作られています。

 酵母を最初に発見したとされるのは、顕微鏡の発明者でもあるレーヴェンフックで、手製の顕微鏡でさまざまな微生物を観察しているうちに発酵中のビールの中から楕円形の微生物を発見し、同じ微生物がパンの発酵においても見られる事を発見しています。

 その後、発酵中の食品の中から発見される楕円形の微生物が食品の発酵に関わっている事が論じられるようになり、パスツールによって発酵が酵母の生理作用によって起こっている事や、無酸素条件下での呼吸である事が明らかにされ、最初の純粋培養も行われています。

 しかし、酵母の利用はそれよりも遥かに古い時代からという事ができ、素材に含まれる糖分を発酵させてアルコールを生成し、酒を作るようになってからは、人にとって酵母は身近な存在となっていたという事もできます。

 酵母が食品を加工するためでなく、本格的に食料として使われるようになった例としては、第一次世界大戦時のドイツにおいて食糧政策の一環として培養されたトルラ酵母がよく知られています。

 トルラ酵母に限らず酵母はビタミン類やミネラル類を多く含んでいるだけでなく、良質のタンパク源という事ができ、ドイツにおいても食飼料用として培養されていました。そんな豊富なタンパク質に着目し、分解する事で旨味成分となるアミノ酸を取り出したものが酵母エキスとなっています。

 基本的な作り方は、酵母を粉砕すると酵母自体が持っていた酵素の働きで酵母のタンパク質の分解が始まり、アミノ酸が生成されます。それを抽出した物が酵母エキスで、主成分としてアミノ酸や核酸由来の物質、ミネラル類やビタミン類が豊富とされ、調味料や微生物の培地に用いられています。

 分類上、酵母エキスは食品添加物ではなく、しょうゆや昆布エキスのように食品に位置付けられています。アミノ酸系の調味料である事や原料にビールやワインを発酵させた後の酵母が使われる事から、ネガティブなイメージをいわれる事もあるのですが、酵母を自身の酵素で分解したという天然由来の物でもあるので、上手に付き合う事ができたらと思ってしまいます。


 
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