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第2334回 ショートの謎(2)



 ショートケーキというと小麦色のスポンジと真っ白い生クリーム、真っ赤なイチゴが重ねられた「苺のショートケーキ」がすぐに思い浮かんできます。そうした柔らかいスポンジを使ったショートケーキは見るからに洋菓子そのものではありますが、日本で独自の発展を遂げた日本生まれの洋菓子という事ができます。

 大正時代、日本にショートケーキを紹介し、広めたのは老舗であり大手の洋菓子店でもある不二家であるとされます。しかし、ショートケーキの発案者については伝えられておらず、有力視されているのは門倉国輝がフランス菓子をアレンジしたという説や、不二家においてアメリカのショートケーキをアレンジしたと見られています。

 日本風のショートケーキの誕生については諸説が存在する中、1922年当時、フランスやアメリカ由来の物は高級イメージがあり、ビスケットを使った素朴なショートケーキは高級品とは見られなかった事や、日本人は柔らかい物を好む傾向があり、しっとりと柔らかく焼かれたスポンジが高級品に見られた事からビスケットがスポンジに取って代わったという自然発生的なものであったともいわれます。

 日本の文献にショートケーキが最初に登場するのは明治22年(1889年)に出版された岡本純の「和洋菓子製法独案内」が最初とされ、「デルビー・ショルトケーキ」として作り方が記載されています。レシピを元に再現すると日本初のショーtケーキはビスケットを使った欧米風の物である事が判り、この時点では日本風のショートケーキは誕生していない事が確認できます。

 次にショートケーキが登場するのは明治38年(1905年)の高野新太郎による「ストロベリーショートケーキ」で、卵をよく攪拌するように指導されている事から、柔らかい食感が求められていた事を伺う事ができ、すでに明治時代の後半にはスポンジとまではいかなくてもパウンドケーキのような柔らかい生地のショートケーキが存在していた事になります。

 その後、明治40年(1907年)の亀井まき子による「和洋菓子製法」には、「ストロベリーショートケーキ」としてスポンジケーキを焼き、潰した苺を挟むと作り方を紹介し、ショートケーキとスポンジが結び付くのですが、ビスケットの頃に見られた生クリームは姿を消しています。

 ショートケーキにおける生クリーム不在の時代はその後も続き、文献上、ショートケーキに生クリームが使われている事を確認できるのは昭和2年(1928年)の朝日新聞5月14日号に紹介された「いちごショートケーキ」で、スポンジの上に苺と生クリームを置いてスポンジを重ねるというほぼ今日のスタイルが確立されていたと見る事ができます。

 不二家は明治43年(1910年)に創業され、大正11年(1922年)に「フランス風ショートケーキ」を発売して大人気となっています。発売当初はバタークリームが使われていたのですが、大正13年(1924年)にアメリカから遠心分離法を使った生クリーム製造機が輸入されると、本格的な生クリームが国内生産されるようになっています。

 柔らかい物を好み高級感を感じるという傾向や欧米への憧れ、国内生産が始められて本格的な素材が身近にあるようになったという時代背景が複雑に絡み、日本のショートケーキという独自の文化が誕生したように思えます。そんな事を考えながらショーケースの中を眺めていると、少しショートケーキが違って見えてきてしまいます。


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