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第2375回 特異な鍋



 鍋物というと、とても身近で家庭的な雰囲気を感じます。それぞれの季節に応じた旬の食材を集め、家族で鍋を囲んで湯気の上がる鍋で調理しながら食べるというのは、日本の家庭における団らんの風景とも思えます。

 鍋物は地域に根差した伝統的な物から新たに考案された物、従来の物に一工夫した物など食材や味付けなど無限に近いバリエーションが存在するように思えます。そんな多種多様な鍋物の中で一つだけ異彩を放ち、家庭での調理は不可能と思える物が「すっぽん鍋」だと思います。

 すっぽんという食材自体が通常は入手が困難という事もあるのですが、2000度にも達するコークスを燃焼させるという強烈な火力や、それに耐えられる土鍋の使用、強力な火力を使用するためにわずかな時間で調理を完了する事、具材がすっぽんのみである事など、すっぽん鍋は他の鍋物とは大きく違う特徴をたくさん有し、家庭料理ではない事を強く感じさせてくれます。

 鉄さえも溶けてしまう高温にさらされる土鍋は、何度もコークスの火に当てて文字通り鍛えてから使われるといわれ、高温に耐え抜き、継続使用ができるようになる事を「鍋が育つ」ともいわれます。

 通常よりも厚手に作られた特別な土鍋も使われるそうですが、それでも育つ鍋は10個中、2、3個ほどとも100個に1個ともいわれ、せっかく育った鍋もあまり長期間に渡っての使用には耐えられないとされます。

 育てている間もしょうゆや酒を染み込ませたり、すっぽんの脂を塗り重ねたりという後の味に関わる工夫が施され、割れそうな雰囲気が感じられるとその鍋は長期間外気にさらされ、乾燥と生地を締める事が行われて割れにくくするといわれます。

 そうした世界観がすっぽん鍋を家庭料理から遠ざけ、専門店でのみ食べられる料理としているようにも思えるのですが、すっぽん自体はかなり古くから食べられていて、縄文時代の貝塚からも当時の人がすっぽんを食べていた痕跡が発見されています。

 それだけ古い歴史を持ちながらすっぽん鍋が家庭料理から離れて行った背景には、高い温度で一気にゼラチン質を分解させる事ですっぽんの深い美味しさが引き出せる事を経験的に学んだ結果という事ができます。

 家庭料理という位置付けを捨て、多くの土鍋を破壊しながら美味しさが追求されるすっぽん鍋には、何かを得るためには何かが犠牲になるという言葉を思い出してしまい、近寄りがたいものさえ感じてしまいます。


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