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第2410回 ミルク味噌汁



 基本的には具沢山で、いろんな素材を使って味噌汁を楽しんでいます。洋風や中華の食材を使う事もあり、普段食べている味噌汁との違いに驚かれてしまう事もあるのですが、いろんな食材の美味しさを引き立たせてくれる事も味噌汁という料理の懐の深さだと思っているので、固定観念に捉われる事なくトライしてみる事にしています。

 そうした味噌汁作りの中でお気に入りとなっている物の一つに、牛乳を使った物があります。味噌汁に牛乳を加える事でコクが増し、ほんのりとした甘味が加わって美味しくなると思うのですが、食べた人の感想としては美味しさに驚きながら日本の味噌汁ではないといわれてしまいます。しかし、味噌汁に牛乳を加えるという手法は、日本に古くから存在していた古典的な味付けという事ができます。

 奈良県に伝えられる「飛鳥汁」は、具沢山の味噌汁に牛乳が加えられて仕上げられており、仏教伝来以前、宮中に献上された牛乳を使って作られていた宮廷料理ともいわれます。

 仏教伝来以前は日本でも乳牛が飼われ、牛乳が献上されていたとも、帰化人によって牛乳がたくさん献上されていたために成立したともいわれ、飛鳥汁は高級な料理として食べられていたのですが、仏教の伝来以降、畜肉食がタブー視された事に合せて牛乳も飲まれなくなり、飛鳥汁は途絶えてしまったとされます。

 今日では飛鳥汁は再現されて、郷土の食として学校給食でも出されているそうなのですが、味噌汁の歴史と照らし合わせると何となく違和感を覚えてしまいます。

 古い時代、味噌は調味料というよりも直接食べる食品としての色合いが濃く、今日のような庶民の食として登場するのは室町時代の事とされます。また、調理が簡単で一度に大量に作る事ができる事から、戦国時代に陣中食として考案されたとする説もあり、陣中食として振舞われた事から従軍していた民兵の間に一気に広まったともいわれます。

 味噌の歴史は非常に古く、最近の研究では縄文時代にはすでに穀物を塩蔵していた形跡がある事が判ってきており、それが自然発酵すれば味噌として成立する事になります。味噌が文献上に登場するのは奈良時代で、完全に発酵して「醤」となる前の物として「未醤」の文字が当てられていた事が今日の味噌の語源となっています。

 徒然草の中にも古い時代の味噌の様子が描かれており、北条時頼と北条宣時が酒を酌み交わす場面で、台所に残っていた味噌を肴としており、塩辛い豆をつまんで食べている事には当時の味噌が今日のようなペーストに近い状態ではなく、保存食の豆のような物であった事が判ります。

 味噌汁が広まった理由の一つに、味噌がお湯に溶きやすい状態になったからとされますが、逆に味噌汁が普及していく過程で味噌がお湯に溶きやすい状態に工夫されていったと考える事もできます。

 そうした味噌や味噌汁の歴史を考えると、仏教伝来以前に味噌汁として飛鳥汁が作られていたという事は考えにくいようにも思えるのですが、具沢山の汁物に保存食の豆を加える事で栄養のバランスが良くなるだけでなく、塩味と旨味が加わり美味しくなる事から使われるようになったというのは自然な成り行きのようにも思えます。牛乳入り味噌汁ではなく、飛鳥汁は飛鳥汁以外の何物でもないのかもしれません。


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