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第2412回 雪花菜(1)



 たまにおからの煮物が食べたいと思い、自分で作ろうと売り場まで行く事があります。最近ではおからが売られているのを見掛けなくなりつつあるそうなのですが、行き付けのスーパーでは大きな袋に入れられて、安価な価格で売られています。安価な価格は嬉しいのですが、その大きさは困ったもので、食べ切れない事を考えて購入せずに帰ってしまう事も多々あります。

 おからは豆腐を作る際に出る大豆の搾りかすで、大豆由来の豊富な栄養と大量の食物繊維を含んでいます。表面積が多いために空気に触れている面が多く、適度に水分を含んでいる事や栄養価が高い事が仇になって、雑菌が繁殖しやすく、すぐに使い切ってしまわないとあっという間に傷んでしまいます。

 おからの煮物には具材として根菜類を加える事から、少量のおからでも仕上がりにはそれなりになってしまうので、残されたおからの使い道に困ってしまいます。味噌汁に加えるのも大好きなのですが、それでも使う量は知れていて、他におからを大量に使うレシピはと考えを巡らせながら、意外なほどおからを使うレシピが少ない事に気付きます。

 以前、おからを大量に使うレシピとしてマヨネーズと和えてポテトサラダ風にという話を聞かされた事があるのですが、試してみると旨味の塊りでもあるジャガイモには遠く及ばず、下手に質感が似ているだけに間が抜けたポテトサラダという感じがして、コクを出すために生クリームを加えたり、旨味を足すために顆粒のコンソメを混ぜたり、食感を滑らかにするためにマヨネーズが多めになったりと、散々苦労した挙句、いつものポテトサラダより少し劣る物にしかならなかった事が思い出されます。

 おからはダイエット用のクッキーとして大人気となった事もあり、クッキーやドーナツなどの生地に配合して使われているのを見掛ける事があります。また、凝固剤の発達で昔よりも豆腐を作るために濃い豆乳を使う必要がなくなった事で、おからの発生は少なくなっているともいわれますが、ほとんどのおからは産業廃棄物として処分されてしまっています。

 行き付けのスーパーでは大きな袋に詰め込まれたおからが50円で売られているのですが、たまに料理のレシピを交換し合っている従姉が行く店は、同じ系列のスーパーでありながら中に入っているテナントの違いのせいか、豆腐売り場の前に大きなおからが入れられた容器が置かれ、すくい取るための柄杓とビニール袋も添えられていて、「ご自由にお持ち帰りください」と書き添えられているそうで、必要なだけの量を持ち帰る事ができるのは羨ましく思えてしまいます。

 栄養価が高く食物繊維も豊富でカロリーは低めという事もあり、いっその事、主食として食べてもと考えてもみたのですが、江戸時代の儒学者、荻生徂徠が若い頃を思い返している中で、経済的に困窮し、近所の豆腐屋でおからをもらって来てはそれを米の代わりに食べていて、それがとても辛かったと書き残している事から、主食として食べるにも難があるように思えます。

 荻生徂徠のエピソードは、豆腐が庶民の暮らしに欠かせない食材となった江戸時代にも豆腐の製造に合わせて大量のおからが発生し、今日のように捨てられていた事が感じられ、歴史的な不人気がおからのレシピが少ない原因のように思えてきます。

 しかし、実際は江戸の町ではおからは人気の食材となっていて、いまよりもバリエーションに富んだ食べ方が行われていました。豆腐が大好きだった江戸の庶民は、豆腐の副産物であるおからも大好きであった事が、当時の料理本、「豆腐百珍」に添えられたおからの項に見る事ができ、今日、ぼそぼそした食材として好まれない事には、一工夫が足りないという事に気付かされてしまいます。


 
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