FC2ブログ

第1777回 パスタという麺(2)


 日本国内で消費されるパスタの約60%が国産のパスタで、残る40%が輸入物のパスタとされ、パスタ自体の消費量は年々増加を続けながら、国産と輸入物の比率はそれほど変わらない状態が続いています。

 国内消費量の過半数を占める国産パスタですが、実はその中に純国産のパスタは含まれていません。総消費量の6割を占めていながら、何故、純国産パスタが存在しないのか、そもそも国産パスタとはと思ってしまうのですが、純国産のパスタが存在しない最大の理由は日本の風土にあるといえます。

 パスタに絶対に欠かせない素材というとデュラム小麦のセモリナ粉と水ですが、日本ではそのデュラム小麦を作る事ができません。栽培のための気候風土が合わないのか、商業的なレベルでの生産量の確保が難しい事や成分的に良質なパスタ製造には適さないとされ、そのため国産パスタでは輸入されたデュラム小麦を使って国内生産が行われています。

 デュラム小麦の主要な輸出国としては、本場のイタリアでは国内の莫大な消費量を賄うために国内生産分のほとんどが使われ、ほとんど輸出は行われておらず、カナダやアメリカ産の小麦が主要な輸入デュラム小麦となっています。

 日本で初めて本格的なパスタが作られたのは明治16年(1883年)の事で、フランス人宣教師のマリク・マリ・ド・ロ神父が長崎の外海町に平屋建でレンガ造りという立派なマカロニ工場を建設し、製造が開始されています。

 本格的な国産化が行われたのは昭和初期からの事で、その当時は日本人には馴染みが薄い物であり、一部の高級ホテルやレストランでしか見る事ができない物となっていました。

 日本で一気にパスタが一般化するのは昭和30年代に入って、イタリア製の全自動パスタ製造機が輸入されるようになってからの事で、日本人の味覚や食感の好みに合わせた複数の小麦粉をブレンドしたパスタが作られていました。

 それまでうどんやそば、素麺といった麺類にしか馴染みがなかった日本人の好みに合わせるために生まれたデュラム小麦と他の小麦の粉を混ぜるという工夫ですが、それ以外にも重要な意味を持っています。

 パスタの本場であるイタリアをはじめとするヨーロッパやアメリカで使われている水は、ミネラル分が多い硬水である事に対し、日本ではほとんどが軟水となっています。軟水でパスタを茹でた場合、デュラム小麦本来の美味しさを引き出す事が難しく、小麦の旨味を軟水でも際立たせるには、少量のブレンドが必要になるといわれます。

 そのため、日本国内で調理するのであればデュラムセモリナ100%よりも80%程度で、他の小麦粉をブレンドした物の方が美味しいとされるのですが、海外旅行の普及やイタリアンレストランのブームもあって、デュラムセモリナ100%である事が本物であり、美味しさの証明のように思われるようになってしまいました。

 イタリアでは1967年に施行されたパスタ法の580条において、乾燥パスタはデュラムセモリナと水で作る事を義務付けています。美味しさや食文化を守る事はとても大切ですが、食の多様性への寛容さによって、現地事情に配慮したブレンド小麦のパスタや最近急速に見られるようになってきた米粉のパスタも正式なパスタとして認められるようになれば、純国産のパスタも実現できる事と思っています。タラコスパゲティや冷製パスタなど、日本が果たしたパスタという食文化への貢献を考えると、認めてくれてもと思ってしまいます。


 
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

kcolumnist

Author:kcolumnist
にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

リンク
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR