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第1782回 サケの朱(1)



 たまにサケは赤身の魚ですよね?と聞かれる事があります。鮮やかなサーモンピンクが特徴のサケは、白身魚と呼ぶにはあまりにも赤過ぎるように思えます。結論からいってしまうとサケは白身魚で、マグロやカツオなどの赤身魚とは異なる肉質の魚となっています。

 魚の赤身と白身は単純に肉の色が違うというだけでなく、肉の構成や行動そのものから違いがあります。赤身魚の筋肉は筋繊維が細く、血管の割合が高くなっていて、含まれている色素タンパク質「ミオグロビン」と「ミトコンドリア」が多くなっています。赤身魚の筋肉が赤く見えるのは、血液やミオグロビンが多いためで、豊富に含まれているミトコンドリアの中ではミオグロビンを介した酸素によって脂肪酸や糖質が分解され、そこから得られるエネルギーを使って筋肉そのものを動かしています。

 白身魚の筋肉は筋繊維が太く、血管は少なめとなっていて、血液やミオグロビンが少ない事が白い色に見える理由となっています。赤身魚の筋肉と違って白身魚の筋肉には、エネルギーを生産するミトコンドリアの数は少ないのですが、筋繊維内の細胞質を使って酸素を使わずに糖質を分解する事で、筋肉を動かす事に必要なエネルギーが得られています。

 赤身の筋肉は筋繊維が細い事もあって収縮が遅く、力も弱いのですが、豊富な血管から常に酸素が供給されているために持久力に富み、長い時間の運動を継続する事ができます。外洋を休む事なく、常に泳ぎ続けるマグロやカツオは瞬発力よりも持久力が求められる事から、血管やミオグロビンが豊富で赤く見える肉となったと考える事ができます。

 それに対し白身魚の筋肉は、速い収縮が可能な太い筋繊維を使って一気に大きな力を生み出す事ができ、瞬発力に富んでいるのですが、急速に乳酸が生成されてされてしまい持続力を維持する事ができません。タイやヒラメなどの比較的近海にいて、外敵から瞬時に逃げ出したり、近付いたエサに一気に襲い掛かったりというライフスタイルに適している筋肉といえます。

 あまり赤身魚として意識する事がないサバやブリは沿岸性の生活を送っていて、外洋性のマグロやカツオといった魚ほどには持久力を必要としない事から、赤さが強くない赤身肉となっています。

 サケは?といわれると、川で生まれて海へと移動し、やがて産卵のために生まれた川を遡上するという大変な事をやり遂げなければなりません。持久力も必要となるのですが、それ以上に川には海にはない流れが急な場所があり、それらを一気に泳ぎ抜ける必要がある事から、瞬発力が重要となってきます。

 そのためサケは瞬発力を重視した白身肉となっているのですが、海洋で生活しているうちにエサとしていた小エビをはじめとする生き物が持っていた色素、アスタキサンチンを体内に蓄えていて、そのアスタキサンチンの色によって独特な朱色を呈する事となっています。

 アスタキサンチンは、ブルーベリーの色素として高い健康効果が知られたアントシアニンと並び称される正に海のアントシアニンといえる成分となっていて、強力な抗酸化作用を持っています。

 白身肉の瞬発力と赤身肉の持続力、その両方が要求される過酷な生涯を送り、大きなエネルギーを発生させ続ける事で生じてしまう活性酸素への備え、それが独特な朱色の身に蓄えられた色素成分というサケの独自性なのかもしれません。


 
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