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第2558回 脂の誘惑



 大好きな時代小説の中によく冷やした豆腐の上に山盛りのおろし生姜を乗せ、しょうゆと酒を合せたものにごま油を二、三滴加えて掛けていただくという場面が出てきます。食通で知られた主人公の好物で、しょうゆと酒の加減が難しいらしく、年若い妻が最近は少しずつ上手に作れるようになってきたという記載も見られていました。

 主人公に限らず、豆腐をいただく際に少量のごま油を加えると美味しさが格段にアップする事は広く知られています。ごまの香りが加わるという事もあるのですが、油分の力も大きいといわれ、油分の存在を感知した脳がより美味しく感じさせているともいわれます。

 ベジタリアンや肉嫌いの人を除き、多くの場合、人は肉が焼かれる香ばしい匂いや焼ける音、鉄板の上で焼かれる肉の映像などを見ると幸福感を覚えてしまいます。この幸福感にも油分が関わっているといわれ、肉が食べたいと欲する背景には、肉というより肉に含まれている脂の存在が大きいとされます。

 直截的なエネルギー源となる糖質や体を作るタンパク質と並び、脂質は体に欠かす事のできない3大栄養素となっています。今日のように脂質が豊富に含まれた食材が身近にあるという事は、人の進化の過程では稀な事で、果実などから糖質、動植物からタンパク質を得る事はできても、充分な脂質を得る事は難しかった事は容易に想像する事ができます。

 そのような状況の中、脳は脂質を得る事に報酬を与えるようになり、脂質を摂取した際にドーパミンを分泌する事で人に幸福感を与え、人が脂質を含む食べ物を求めるように仕向けるという方法を採るようになりました。

 同じような仕組みは糖分についても行われており、糖分を摂取すると幸福感が得られ、摂取しないとイライラしてくるという糖依存症は知られる事となっていますが、脂質への依存症はそれほど認知されておらず、タンパク質が不足したために、突然、肉を食べたくなったと思い込んでいる事も多いといわれます。

 人が突然何かの食べ物を食べたいと思う事については、その食べ物に含まれている栄養素が不足しているため、本能的にそれを補おうとすると考えられていましたが、先日行われた研究によってそれは否定され、食べたいという欲求と栄養はそれほど関係がない事が判ってきています。

 肉に対する幸福感を作り出す脳の働きは悪くないとして、脂濃い物を食べないと落ち着かないという状態になると依存症が進んでいる事になるので、少々注意が必要かもしれません。



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