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第2672回 蕎麦の粋(1)



 最近のヒットメニューの一つとして「ポテそば」なる名前を聞いていたのですが、季節柄、「ポテざるそば」も登場したという事で大いに興味を魅かれています。ポテそばとは天ぷらそばや山かけそばのように、その名の通りフライドポテトがトッピングされたそばの事で、最初に聞いた際は抵抗を感じたのですが、そばと天ぷらやかき揚げといった揚げ物との相性の良さを考えると、意外と良い取り合わせのようにも思えます。

 ジャガイモが大好きで、フライドポテトにも思い入れが大きい身としては、表面の揚げたてのカリッと感は大切にしたい事もあり、天ざるそばのようにそばとフライドポテトが分けて出されるのが嬉しいとポテそばよりもポテざるそばの方に魅力を感じてしまいます。

 天ざるそばというと、以前、東京の下町にある隠れ家的名店に案内された際、身なりの良い初老の紳士が文庫本を片手に来店し、天ざるそばを注文して天ぷらを肴に酒を飲み、そばをいただいて長居する事なくさっと帰っていく姿に江戸の粋を感じた事があります。

 江戸っ子がそば屋で酒を飲むようになったのは、当時のそば屋が注文を受けてからそばを打ち始めるため、その待ち時間を埋めるために酒を飲むという習慣が根付いたともいわれ、酒の肴としてすぐに出す事ができる焼き海苔や板わさ、出汁巻き卵、蕎麦味噌、鴨焼きなどのメニューが用意されていました。

 そば屋に入るとまず酒とすぐに出てくる肴を注文し、そばが出てくる間に飲む酒の事を「蕎麦前」と呼ぶ独自の文化も生まれていて、蕎麦前は日が傾いたまだ明るい時間にふらりと立ち寄るという自然体が一層酒を美味しくしてくれるとされ、海苔で酒を一本、出汁巻き卵や天ぷらでもう一本。その後、そばをいただいてそば湯で軽く酔いを覚まして長居せずにさっと帰るのが粋とされます。

 そば屋で酒を飲む通の文化として、「ぬき」と呼ばれる独自の注文方法が存在し、ぬきで注文するとそばを抜いた状態で供されていました。「天ぬき」の場合、熱々のつゆに揚げたての天ぷらが入った状態、鴨ぬきの場合、切り分けた鴨肉がつゆに浸かった状態で出されてきて、天ぷらや鴨肉を味わいながら酒を飲み、つゆの美味しさを堪能しながら半分ほどを残しておいて打ち上がったそばを待ったといいます。

 せっかちな江戸っ子に愛され、手早く食べられる食事というイメージのそばですが、細かな部分に遊び心に満ちた粋な世界が展開されているのだと、尽きない興味を感じてしまいます。


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