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第2991回 二つのペクチン



 ジャムを作る際に欠かせない要素となるペクチン。ペクチンは植物には広く含まれていて、細胞壁の中でセルロースを接着する役割を担っています。果実が未熟なうちはペクチンは水に溶けない不溶性の性質を持っているのですが、果実が熟していくに連れ水溶性に変化する事で果実は柔らかい食感へと変化していきます。

 ペクチンは1825年、フランスのアンリ・ブラコノーによって果物に含まれる粘液質の細胞組織成分として単離され、ギリシャ語の「凝固する」「濃厚な」といった意味を持つ「ペクトス」にちなんでペクチンの名前が与えられています。

 ペクチンが固まるには糖と酸が必要となっていて、砂糖を加えて果物を煮込む事はペクチンの凝固に必要な糖と酸を与えている事となり、古くから行われてきたジャム作りはペクチンを有効に利用した加工法という事ができます。

 ペクチンは含まれるメトキシル基の割合によって大きく高メトキシルペクチン(HMペクチン)と低メトキシルペクチン(LMペクチン)の二つに分ける事ができ、それぞれ性質が異なるものとなっています。

 天然のペクチンはガラクトースが細長い鎖状に並んだものに多数のメトキシル基が結合したHMペクチンの状態で存在しています。ペクチンを抽出する際に酸化処理を行うとガラクトースに結合したメトキシル基が外れ、LMペクチンの状態となってしまい、それぞれ異なる利用法ができるようになります。

 HMペクチンが固まるには糖度が55度以上、酸度がpH3以下といった条件が必要となる事から、HMペクチンは甘味が強いジャムや酸味が効いたゼリーを作る事に向いています。

 それに対しLMペクチンは凝固するために糖や酸を必要としない事から、低糖度のあっさりとした味わいのジャムを作る事ができます。糖や酸によって凝固しない代わりにカルシウムと結合して固まる事から、牛乳と混ぜる事によって固まるお菓子作りにも利用されています。

 ジャムをはじめとするお菓子作りのイメージが強いペクチンですが、人の消化酵素では分解されず、腸内細菌によって分解される事から食物繊維として機能する事が知られ、整腸作用や血中コレステロール値の低減、血圧の安定といった効能がいわれるようになってきています。体内のセシウムのデトックスにも役立つという論文もあり、今後、注目される事になるのかと考えてしまいます。


第2978回 卵の秘密(3)



 保管にそれなりの気を使う事が大切な卵。充分に気を使って殻が剥けやすくなる4日ほどを過ごさせた後、茹でて仕上がる事となるのですが、茹で方によっても仕上がりに差が出てくる事と思います。

 以前、試してみたのは基本的な多めの水に卵を入れて火に掛け、時折、菜箸やスプーンなどで卵を回転させて黄身が偏る事を防ぎながら茹でるという方法と、鍋に1cmほどの水を張り、完全に沸騰させたところへそっと卵を置いて蓋をし、高温の蒸気を使って一気に蒸し上げるという方法でした。

 たっぷりのお湯で茹で上げる方法は黄身を中心付近に持ってくることができ、気泡の窪みも偏りなくきれいな仕上がりになるのですが、黄身の方が白身よりも硬化する温度が低い事から、黄身を半熟にするという仕上げには不向きなように思え、逆に高温で蒸し上げる方法では外側から一気に高温にする事から白身が固まっても黄身はまだ固まっていないという状態にする事はできるのですが、黄身や気泡の位置は偏ってしまいます。

 新たな良い茹で方はないかと調べていると、イギリスの三つ星シェフであり、最新の調理技法の一つでもある分子ガストロノミーに詳しいブルメンタール・シェフが科学的観点から美味しい卵の茹で方を提唱していました。

 卵の白身が固まる温度は75度から79度、黄身はもっと低くて65度から70度とされます。そのため茹で卵を作るには100度に沸騰させたお湯で茹でる必要はなく、むしろ茹でてしまうと白身に火が入り過ぎて硬い食感になってしまうといいます。

 ブルメンタール・シェフによると、茹で卵にする卵は冷蔵庫から出したものを使う方が良いそうで、これは変動する室温ではなく常に一定の温度に保たれた状態からスタートするためとされます。

 冷蔵庫から出した卵を一旦鍋に入れて浸る程度の水を入れ、水の量を決めた上で卵を取り出し、火に掛けてお湯を沸かします。お湯が沸くまでの間に卵の底の部分を硬く平らな面に軽くぶつけて、卵の底に直径5mm程度のへこみを付けておきます。

 通常だと茹でる前に殻にひびなどを入れてしまうと、茹でる途中で中身が飛び出してきたり、ひびに沿った筋などが入って仕上がりが汚くなってしまうのですが、ブルメンタール・シェフの方法ではこのへこみが重要になるといわれます。

 鍋のお湯が完全に沸騰したら卵を入れ、火を止めて蓋をし、好みの茹で加減に合せて6分から10分ほどおいて卵を取り出し、冷水にさらせば出来上がりとなります。6分では白身はふんわりと固まり、黄身はトロトロの状態に茹で上がり、10分では硬茹での状態に仕上がります。

 茹でない茹で卵というのは少々違和感を覚えてしまいますが、卵をタンパク質の塊りと考えると、最適な温度設定を求めた調理法だと思えてきます。


 

第2977回 卵の秘密(2)



 卵を買いに行くと通常は、卵は常温の売り場に並べられていて、常温での販売が行われています。そのため卵はわざわざ冷蔵庫に入れる必要はないと考えがちになるのですが、卵は冷蔵庫に入れるべき食品で、低温で保管する事が好ましいという事がいえます。冷蔵庫に入れるか入れないかでは、品質の劣化が4倍にも及ぶという意見もあります。

 低温で保管した方が良い卵が常温で売られている理由としては、卵自体の構造に大きな理由があり、殻によって外界から隔絶されたように見える卵ですが、一枚板のような殻は小さな穴が開いたメッシュ状になっていて、卵を冷蔵にしてしまうと消費者が購入して持ち帰る際に結露が着いてしまい、水の浸透圧を使って大気中に浮遊していた細菌が殻の網の目を潜って卵の中に入ってしまいます。

 購入後、家に持ち帰るなり卵を洗って冷蔵庫などに保管するという意見もありますが、洗ってしまうと結露が着いた際と同じ理由で細菌が卵の中に入ってしまうリスクが高まる事から、卵は洗わずに冷蔵庫に保管する事が好ましくなっています。

 冷蔵庫に保管する際も卵を保管する穴の開いたホルダーがドアポケットのある事から、ドアポケットに卵を保管してしまうのですが、ドアポケットは開け閉めの際に温度の変化が大きく、長く開けておく事で卵に結露が付着したり、開け閉めの際の振動でデリケートな卵の味に影響が出るともいわれます。

 温度変化の少ない冷蔵庫の中に保管する事にした卵は、購入した際の透明なパックに入れた方が品質を保持しやすいとされ、その際、尖った方を下にするというパック詰めされた状態のままがより美味しくいただけるコツとなっています。

 卵の尖った方を上にしてしまうと、反対側の丸い方にある気泡が舌になってしまい、中に含まれている二酸化炭素に上に移動する力が加わってしまい、二酸化炭素が白身に溶け込む原因となってしまいます。白身に溶け込んだ二酸化炭素は加熱によって膨張し、白身に細かな気泡を生じてザラつきの元となって卵の食感を悪くしてしまいます。

 意外なほど細かな気遣いが要求される卵ですが、かつては病気にでもならない限り食べられないといった高級食材であった事を考えると、充分に注意して扱わなければとも思えてきます。


第2876回 卵の秘密(1)



 卵を茹でて殻を剥き、細かく潰してポテトサラダに加えたり、そのままマヨネーズで和えてたまごサラダにしたりと、比較的我家では茹で卵の登場頻度が多いように思えるのですが、相変わらず殻が上手に剥けずに困っています。

 潰してしまうので問題はないのですが、殻に張り付いて層状に剥がれてしまう白身のお陰で黄身とのバランスが変わったり、生ゴミの量が増えたりという弊害があるだけでなく、おでんや煮卵などのそのままの姿で出てくる料理にはとても使えないと思えてきます。

 以前、コンビニエンスストアの店長は、研修としておでんで使うために店で茹でて用意する卵の剥き方が伝授され、独自のノウハウが存在するという都市伝説を聞かされた事があるのですが、実際に店長経験者に伺ったところでは、そのようなノウハウも研修も存在しないとの事でした。

 定説としていわれている事では、卵は鮮度が高い、新しいものほど殻が剥きにくいとされ、しばらく買い置きしていた卵を茹で卵に使う方が仕上がりが綺麗になるので良いとされます。

 そのしばらくという時間はどのくらいなのかと気になってしまうのですが、卵の大きさや茹で方、剥き方などによっても違いが生じる事とは思われますが、購入後、4日以上保管する事で剥け方に違いを感じる事ができるとされます。

 また、茹でる前に室温に戻しておく事も重要とされ、茹で上がったら全体に軽くひびを入れて冷水にさらし、茹でられた卵が冷えて収縮する際に殻の内側に水分を入れておく事も剥きやすさを向上させるといわれます。

 冷水にさらした後は平らな面で全体を転がすようにして細かなひびを満遍なく入れ、無理に薄皮まで一緒に剥かないようにすると綺麗に殻を取り除けるそうなのですが、無理に剥かないようにした薄皮を除く際にも白身が剥がれて表面が荒れてしまった事もあります。

 なかなか上手な茹で卵の剥き方に関するノウハウに出会えない中、気になっていろいろと調べていると、意外と卵を扱う作法というものが存在する事に気付いてしまいます。


 

第2975回 胡麻の効用(2)



 燃料として使われる事が主流となっていたかつての胡麻ですが、食用としてもしっかり利用されていて、米粉や小麦粉を使った古い時代のお菓子、唐菓子には揚げて仕上げる際の揚げ油には胡麻油が使われています。

 精進料理の普及も食材としての胡麻の位置付けに大きく関わっていて、江戸時代初期に中国から「普茶料理」が伝えられれると、日本の精進料理も様変わりし、胡麻豆腐の原点ともなる葛の根から採った葛粉に細かくすり潰した胡麻を混ぜて固めた「麻腐」が作られるようになると、貴重な脂質を得られる料理として禅僧の健康を支える事となります。

 胡麻は燃料、食材としてだけでなく薬用としても利用されていて、中国の最古の薬物書とされる「神農本草経」には、胡麻を食べる事で心臓や肝臓、脾臓、腎臓、肺の機能を高め、肌や骨、脳にも活力を与え、長期に渡って食する事で体が軽くなって老化も防げるとしています。

 日本でも同じように胡麻の健康効果の高さは意識されており、「黒胡麻は腎に作用し、白胡麻は肺に作用する。共に五臓を潤し、血脈を良くし、腸の調子を整える」と「本朝食鑑」には記され、貝原益軒の「菜譜」には「朝夕食すべし、身を潤し、虚を補い、気を増し、肌肉を長じ、耳目を明らかにす、中風によし」と記されており、胡麻の万能薬ぶりが覗えます。

 今日でも胡麻を使ったサプリメントは人気となっていて、身近にも利用している人を多く見掛ける事ができます。中国の諺に「毎日、年齢と同じ数の胡麻を食べなさい。そうすれば病気知らずになれる」というものがあり、食を通した健康作りの先駆的食材、それが胡麻だと思えてきます。


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にんにく卵黄本舗の健康コラムです。
食と健康をキーワードに最新の医療情報から科学技術、食文化や献立まで毎日更新で幅広くお届けします。是非ご覧ください。

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